軟化水を給水したボイラは、水が蒸発しボイラ水が濃縮することにより、pH(アルカリ)値を水質基準値まで上昇させることが可能です。 pH(アルカリ)値が基準値範囲内なのに、その上ボイラ薬品を使用する必要が本当にあるのか?という疑問を持たれるお客様もおりますが、pH値の管理だけではボイラの障害を防止することはできません。 pH値はボイラ水処理にとって重要な管理指標の一つであり、適正でなければ障害要因になりますが、ボイラ障害の要因はpHのみではないということです。 脱酸素剤(防食剤)やスケール防止剤等の薬品を適度に投入していかなければ、缶内の腐食やスケール付着を防止し、安全で効率の良い運転を維持できません。 |
ボイラに使用する水には様々な成分が溶解しており、これらは水の蒸発によりボイラ内で濃縮され濃度が高くなり、ボイラ内の腐食を発生促進させたり、あるいは固形化してスケール付着を発生させたりするため、ボイラ障害の要因になります。 ボイラ薬品を使用することにより、これらの障害を抑制しますが、濃縮がさらに進めばキャリーオーバー(ボイラ水が蒸気と共に持ち出されること)が発生し、蒸気純度の低下や熱効率低下を引き起こします。 そのため、ボイラ水が一定以上の濃縮割合(JISやボイラメーカーの基準)に達する前に、濃縮したボイラ水を系外に排出(ブロー)し、給水により薄めることで濃縮割合を一定以下に保持することができます。 |
通常ボイラ内部の状況は年1回程度の点検時にしか確認することができません。点検後にボイラ内で腐食やスケールの障害が発生しても、次回点検まで外部から発見することは困難です。 そのため、定期的にボイラ水を採取分析し、ボイラ水質状況を継続的に把握することで、障害を未然に防止し、また障害発生に対して早期の対策を実施することが可能です。 これは、我々人間が病気の自覚症状がなくても定期的な健康診断を受診することで、早期に病気を発見し、治療することができるのと同じことです。 お客様での水質管理用に水質試験器セットも用意しております。 |
ボイラ薬品には、主に缶体トラブルを防止するための清缶剤、脱酸素剤、及びこれらの混合品である複合清缶剤、また蒸気復水系統トラブルを防止するための復水処理剤があります。 これらの薬品には、原料や配合の異なる製品がラインアップされており、使用するボイラ型式、給水水質、蒸気用途などにより最適な製品を選択します。主な製品は製品情報をご参照ください。 選定につきましては、株式会社日本サーモエナー各拠点またはコールセンターへお問い合わせください。 |
ボイラ薬品は含まれる成分により適用される法令があります。
代表的な法令 ・毒物及び劇物取締法(詳細は「医薬用外劇物の取り扱いについて」をご参照ください) ・特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法) ・労働安全衛生法 ・水質汚濁防止法 *詳細は「関連リンク集」をご参照ください。
ボイラ薬品は基本的にアルカリ性物質となりますので、上記法令に該当しない製品に関しても保護具等を着用し、劇物品同様の取り扱いをお願いします。 |
軟化器とはスケール成分である硬度成分を除去するために使用する装置です。軟化器内にはイオン交換樹脂が入っており、この樹脂により水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの陽イオンをナトリウムイオンに置き換える働きをします。 イオンの置き換えが終了すると交換能力がなくなるため、食塩水(塩化ナトリウム)を通水させ、元のナトリウムイオンに置き換えることで、繰り返し使用することが出来ます。この作業工程を「再生」と言います。 軟化器管理はこの再生作業が重要で、軟化器を通した水には硬度が検出されないように、再生作業を定期的に実施する必要があります。 再生に使用する食塩(塩化ナトリウム)は吸湿性が高く、湿度変化が大きい場合には大気中の水分を吸湿し固まることがあります。効能は変わりませんが、溶解等の取扱いが大変になりますので、保管は温度や湿度の変化が少ない場所にしてください。 | イオン交換樹脂↓ 食塩(塩化ナトリウム)↓ |
キャリーオーバーは汽水共発ともいい、ボイラ水や溶解している固形物がボイラ外へ持ち出される現象を言います。 キャリーオーバーの要因にはプライミングとフォーミングの2つがあり、プライミングはボイラ水が激しく沸騰するときに水滴が飛び出して蒸気に混入する現象で、フォーミングは油脂類の混入や高濃縮時に泡立ちが発生する現象です。
キャリーオーバーが起こると以下の障害が発生します。
キャリーオーバーの主な発生原因として以下があります。
キャリーオーバーの防止対策
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