外観上は無色透明できれいな水道水や井戸水でも、その中には無機物や有機物等の様々な物質が溶解しています。温水ボイラ等の密閉系統においては水温も低く、蒸発がありませんので、スケールの障害は発生しにくいですが(但し腐食障害は発生する)、蒸気ボイラの場合は、蒸気となって取り出されるのは水(純水)のみであり、溶解している物質はボイラ内に残留し濃縮します。その結果スケールの付着や腐食が発生し、ボイラの寿命に影響を与えます。 以上のように、水に関するボイラのトラブルを未然に防止し、ボイラを長持ちさせるために水処理が必要となります。 ここでは、その水処理における用語を解説します。 |
水質分析項目の単位としてmg/Lという表記があります。これは水の中に溶けている物質の濃度を示す単位で、1mg/Lとは、水1Lに1mgの物質が溶けていることを示します。(1m3に1gが溶けているのと同じ) (参考) 1mg/L = 1g/m3 ≒ 1ppm = 1g/t |
pHはpower of Hydrogenの略で、読みはピーエイチ(英語読み)、またはペーハー(ドイツ語読み)です。現在の法令及びJIS(日本工業規格)ではピーエッチと定められています。 |
全固形物(全蒸発残留物)は、水中に溶解、懸濁している成分の総量です。 |
電気伝導率は、「面積1m2の2個の平面電極が距離1mで対向している容器に水溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数」と定義され、単位はmS/m(ミリジーメンス/メートル)です。 電気伝導率は測定温度により値が変動するため、通常25℃の測定値で表示します。エクオスボイラの電気伝導率基準値は、300mS/m以下となっています。 (備考) ボイラ水において、全固形物と電気伝導率とはpH値にもよりますが、概ね次の関係式があります。 |
酸消費量は水中に含まれるアルカリ成分(炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化物など)の量を、これに相当する炭酸カルシウムの濃度に換算して表したものです(単位:mgCaCO3/L)。
① 酸消費量(pH8.3)
② 酸消費量(pH4.8) |
硬度とは水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を示します。硬度がボイラ内に流入するとボイラ内壁にスケールとして付着します。スケールは断熱材と同様な挙動をしますので、熱効率の低下や過熱等による缶体パンクを発生します。硬度流入によるスケール防止のため、ボイラ給水には硬度の基準値があります。エクオスボイラの給水の硬度基準値は1mgCaCO3/L以下です。
硬度の濃度を表す単位には、次の2通りがあります。 ① mgCaCO3/L カルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を炭酸カルシウム(CaCO3)に換算し、炭酸カルシウムとして何mg/Lあるかを示す。
② ドイツ硬度(○dH) カルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を酸化カルシウム(CaO)に換算し、酸化カルシウムとして水100mL中に1mgあるとき、1度(○dH)という。 |
ボイラ水には塩化物イオンの基準値があります。これはボイラ缶体を腐食から守りボイラ水の濃縮度合を知るために決められています。一般に水道水中には消毒のために塩素が入っており、また海岸近くの井戸水の中には、高濃度の塩化物イオンが含まれています。 塩化物イオンはボイラ内部の防食皮膜を破壊する性質があり、塩化物イオンが高くなると腐食が発生し、進行することになります。 塩化物イオンはボイラ内に入っても分解せず、また沈殿物を生成しないため、ブロー作業によりボイラ外へ排出しない限り、ボイラ内で蓄積(濃縮)されます。従って給水とボイラ水の塩化物イオンを測定することによりボイラ水の濃縮度が判り、ブロー量等を算出することが出来ます。 エクオスボイラの塩化物イオン基準値は400mg/L以下です。 |
シリカは岩石やガラスの主成分で自然界中の水に含まれています。シリカはボイラ水中で濃度が高くなると硬質のシリカ系スケールを生成します。シリカ成分は軟化器では除去出来ませんので、給水中のシリカが高い場合には、ブローで排出するしかありません。または、復水(リタン水)の回収量を増やす等の対策が必要となります。 (参考) 高圧ボイラでは、シリカの選択的キャリーオーバーにより、過熱器やタービン等にシリカが付着するため、シリカ基準値は非常に低く設定されています。 |
ボイラ水にはりん酸イオンの基準値があります。これはスケール付着防止、腐食防止のために決められています。りん酸塩系の清缶剤の効能の1つに、軟化器からのリークした硬度成分をボイラ内でスラッジ(沈殿物)化させます。 エクオスボイラのりん酸イオン基準値は、20~100mg/Lです。 |
給水には必ず酸素が溶け込んでおり、水温20℃では約8.8mg/Lの溶存酸素が存在します。この給水がそのままボイラ内に入ると酸素による腐食を起こします。
① 水温上昇による脱気(脱気器や給水加熱):物理的除去 以下に大気圧における各温度の飽和酸素量を示します。
大気圧における各温度の飽和酸素量
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ボイラ水には亜硫酸イオンの基準値があり、これは給水中に含まれる溶存酸素による腐食を防止するため決められています。亜硫酸イオン(亜硫酸塩)は食品添加物に該当することから、食品工業や病院などで蒸気を直接使用する場合に用いられる脱酸素剤成分です。 |
ボイラ水にはヒドラジンの基準値があります。これは亜硫酸イオンと同様に給水中に含まれる溶存酸素による腐食を防止するため決められています。ヒドラジンは安全性の問題から一般に蒸気が直接人体や食品にあたらない場合に用いられる脱酸素剤成分です。 |
① 原水 (参考)
② 給水
③ 復水
④ 補給水 給水量 = 復水量 + 補給水量
⑤ ボイラ水
⑥ ブロー水 |